海

01

シュオのはじまり

今、わたしたちは生きていて、いずれ死ぬということ。幼少期はこのことばかり考えていた。小学3年生の頃、体育の授業で、仲のいい友だちがヒザを擦りむいたことがあった。血が滲んだヒザを水道の水でジャージャー洗い流す彼女の横でぼんやりその姿を眺めながら、「今という時間は本当に今しかないんだ」という言葉が頭をよぎり、身体中が熱くなった瞬間のことを強烈に覚えている。夏の雲ひとつない青空と友だちの真っ白な体操着が、スクリーンの向こうの景色のようにものすごく遠くに見えた。「みんないなくなる」。その言葉が浮かんだことは、生きていることをはじめて実感したような、切なくて素敵な体験だった。しばらく休むと彼女のヒザの血も落ち着いて、ふたりでグランドまで駆け足で戻った。傷口は閉じてまた走れるようになる。わたしは、人生はきっとこんなことの繰り返しなのだろうと思いながら全力で走った。自分だけたくさん年をとったような気がしていた。

あれから随分と時がたち、わたしは大学時代の友人の星芽生とふたりでシュオをはじめ、冠婚葬祭で使う小物やジュエリーを作るようになった。もともとジュエリーデザイナーをしていた星に、「お数珠を作ってほしい」とお願いしたことがきっかけだった。モノが哀しい心を救ってくれるかどうかはわからないけれど、美しいお数珠を持って大切な人のことを想う時間が、いつかふと誰かの気持ちの支えになったらいいなと思っている。

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