10

春にはパールを

2月を前にして少し気が早いかもしれませんが、「もうすぐ春が来るな」と思ったとたんにパールをつけたくなりました。わたしのファーストパールは二十歳の誕生日に叔母が贈ってくれた〈ミキモト〉のプチパールでした。何せカジュアルな服しか着たことがなかったので、淡く輝くネックレスを見たときに面食らったのを覚えています。真珠が放つツヤもテリも、当時のわたしには不釣り合いに思えました。そんな気持ちを察してか、叔母が、「白いTシャツやグレーの丸首ニットに合わせても可愛いわよ」と、コーディネートのアイデアをくれたのです。わたしは言われるがままにグレーのニットとデニムにプチパールを付けて、これまた叔母からもらった〈キサ〉の革ぐつを合わせました。鏡を見ると予想より真面目に見えたので、白のハイカットのコンバースに履き直しました。「わたし、やり過ぎてる?」こんなにシンプルな装いでもドキドキそわそわ落ち着かない。これがわたしのパールデビューでした。

春になるとパールをつけたくなります。4月生まれなので、いくつになっても二十歳の贈り物のことを思い出すのです。時間は人も物も変えていくのだなぁ。あの頃、気恥ずかしかったパールがいまは大好きです。もらったときはただのネックレスでしたが、いまは叔母との大切な思い出のつまった宝物です。時間がもし柔らかいクッションみたいなものだったら、40代のわたしは、それをぎゅうぎゅう抱きしめたい。それなりによくやってきたよねって自分をねぎらいながら。少し傷ついたところもあるけれど、今年の春もパールをつけたいです。

photo:Suzuki Yosuke text:Yoshida Naoko

Back to List

PAGE TOP