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絵本を作りました

2歳のこどもたちに向けた絵本を出すと決まってから、自分と向き合う日々が続きました。「私は一体どんなお話を届けられるのか」。その頃、3歳になったばかりの息子はガラスのコップをのぞいては、おにぎりや目玉焼きに向かって「コップでみるとむにゅむにゅ〜」と言って楽しんでいました。ガラスの屈折から生まれる虹のような光にも夢中で、絵本のストーリーをぼんやり考え続ける私に、「ニジがでた!」と嬉しそうに教えるのです。それで漠然と「コップでのぞいた世界」のことを考えるようになりました。とはいえ、お話はいっこうに生まれません。大人がいくらコップをのぞいても、何ひとつ浮かばないのです。まぶたの裏に映る星のようなものを見るためにギュウギュウ目をつむったり、鏡の中の世界をなんとかのぞきこもうとがんばっていた、小さな頃の自分はすっかり消えていました。のぞいたコップの先にある魅惑の世界は、こどもたちだけが持っているスペシャルな景色なのだと思い知ったのです。 手帳にひたすらコップやカップの絵を描いて、上を向いたり下を向いたりしている私を見かねてか、ある日、一緒にランチを食べていた夫が言いました。「コップとカップって響きがいいね。タイ語の“コップンカー”みたいでさ」。文字ではなく、音で「コップとカップ」という言葉を聞いたとき、私は「あわわ」と言いました。そう言っている間に、閃いたことをすべて書き留めたくて、時間かせぎの「あわわ」でした。カバンの奥から手帳を取り出して、コップとカップのラフスケッチに目玉を描き入れました。その瞬間に絵本『こっぷんとかっぷん』の物語が動き始めたのです。飛び上がるくらい嬉しい瞬間でした。 ファンタジーと現実の区別のない、こどもたちだけが持っている「特別な目」のことを書きたい。その思いが『こっぷんとかっぷん』の物語につながっていきました。コップとカップを通して世界を見ると、いつもとちょっと違う風景が見えてくる。この絵本を通じて、こどもたちに、主人公の“ぼく”や“こっぷんとかっぷん”と遊んでもらえたら嬉しいです。そして、私のお仲間である大人たちには、“ちょっと違うものが見たい”という気持ちを捨てきらないで、まだ一緒にふんばろうねと伝えたいです。

絵本は、4月25日、若芽舎より刊行されます。

問合せ:ブックスアンドプリンツ(http://booksandprints.net/

photo:Suzuki Yosuke text:Yoshida Naoko

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